子どものメンタル不安への向き合い方夫婦の方針子育て方針

子どもの不安に親が「大丈夫」と言い続けるほど、不安は長引く

子どもが不安を訴えるたびに安心させようとしてしまう。でも「大丈夫」を繰り返すことが逆に不安を定着させることがある。親としての向き合い方と、夫婦で話し合うときの視点を整理する。

2026-07-24

子どもと笑い合う親

子どもが「なんか不安」「眠れない」「明日が怖い」と言い始めたとき、ふたりの対応がずれる。一方は「もっと話を聞かせて」と寄り添おうとし、もう一方は「考えすぎだ」「慣れれば大丈夫」と流そうとする。どちらが正しいか、という話し合いは大抵まとまらない。

その前に知っておきたいことがある。「安心させようとすること」自体が、子どもの不安を長引かせることがあるという事実だ。

親が「大丈夫」と言い続けるとき、何が起きているか

不安を訴える子どもを安心させようとする親の行動——「大丈夫だよ」「心配しなくていいよ」と繰り返すこと——は、その場では子どもを落ち着かせる。問題は、それが繰り返されるときだ。

子どもは「不安になったら親に聞けばいい」「親が大丈夫と言ってくれれば安心できる」という回路を学んでいく。その回路が定着すると、不安を感じたとき自分で向き合うのではなく、まず確認や安心を求めるようになる。確認を求めるたびに一時的には落ち着くが、時間が経つとまた不安になる。そのループが繰り返される。

これは子どもを責める話ではない。脳は「不安→解消」という体験を繰り返すことで、その流れを強化する。親が毎回解消を担うと、子ども自身が不安と向き合う経験が積み重ならない。そうなると、親がいないと不安を処理できない状態になっていく。

文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2024年度の小・中学校における不登校児童生徒数は約35万4千人と過去最多を記録した。「学校に行くのが不安」「休み明けが怖い」という気持ちが起点になるケースは多く、子どもの不安がどう扱われるかは、学校生活全体に影響する。

「もっと寄り添うべきだ」と「そのうち慣れる」の間にあるもの

「親が安心させすぎるのが問題」と言われると、「じゃあ放っておけばいい」と受け取られることがある。そうではない。

「大丈夫と言い続けること」が問題なのは、不安を受け止めずに解消しようとするからだ。「大丈夫」という言葉は、「今感じている不安は気にしなくていい」という意味に受け取られやすい。不安を感じている子どもにとって、それは自分の気持ちを否定されることに近い。

「そのうち慣れる」「気にしすぎ」も同様だ。気持ちの存在を認めずに流すと、子どもは「この気持ちを親に話してはいけない」と学んでいく。不安を表に出さなくなるだけで、消えたわけではない。

ふたりの対応の温度差は、「寄り添い派」と「放置派」という価値観の違いというより、「どう関わるか」の手段の違いから来ていることが多い。目的——子どもが不安と向き合えるようになってほしい——はほとんどの親で共通している。


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子どもの不安が「深刻」なのかどうか

国立成育医療研究センター(2026年6月)が思春期の子どもを対象に実施した縦断調査によると、中等度以上の抑うつ症状を抱える子どもの割合は2024年に14.7%まで上昇した(2021年は11.4%)。2025年には11.0%に改善したものの、コロナ禍前と比べて高い水準で推移している。

この数字は中等度以上という区切りであり、軽度の不安や気分の落ち込みまで含めれば、日常的に何らかの不安を感じている子どもははるかに多い。「うちの子もそのくらいは普通」という感覚は、現実とずれている可能性がある。

だからといって、日常の不安を全て深刻なサインとして受け取る必要もない。問題は、子どもが不安を感じるかどうかではなく、それをどう扱えるかだ。不安を感じても自分でなんとかできる感覚を育てられるかどうかが、長期的な違いを生む。

専門的なサポートが必要な目安は、「2週間以上、食事・睡眠・日常生活に支障が出ている」「特定の状況を回避し続けている」「自分を傷つけることを口にする」などだ。これらが重なるようなら、学校のスクールカウンセラーや小児科への相談を検討する価値がある。

子どもが親に話しかけるシーン

共感することと、解決しようとすることは別

子どもが不安を話してくれたとき、親にできる最初のことは「うん、それは怖いね」と気持ちを認めることだ。「でも大丈夫」「心配しすぎ」「先生に言ってあげるよ」は、いずれも解決に向かう反応であって、共感ではない。

共感は「あなたが感じていることを、私も感じた」という応答だ。解決は「その気持ちをなくしてあげる」という行動だ。子どもが求めているのは多くの場合、解決ではなく共感で、「分かってもらえた」という体験が、子どもが自分で次を考えるためのエネルギーになる。

具体的には、「何が怖い?」「どんな感じがする?」と聞くことで、子どもが自分の不安を言語化する手助けができる。感情に言葉がつくと、少し距離を置いて向き合えるようになる。「学校が怖い」より「算数のテストで答えられなかったときに笑われるのが怖い」の方が、子ども自身にとって扱いやすくなる。

急いで「じゃあこうしよう」と動かず、「それで、どうしたいと思う?」と返す。自分で考えたことに自分で取り組む、というサイクルを積み重ねていくことが、不安と向き合う力を育てる。

夫婦でずれを感じたときの話し合い方

子どもへの対応でふたりの温度差が出たとき、「どっちが正しいか」を決めようとすると行き詰まる。「もっと寄り添うべき」vs「甘やかしすぎ」の構図になった瞬間に、話し合いは勝ち負けになる。

ここで有効なのは、子どもの様子について情報を共有する時間を作ることだ。「最近、学校から帰ってきたとき何か言ってた?」「昨日の夜あんなこと言ってたんだけど、どう思う?」という対話は、方針論争ではなく観察の共有だ。

観察を共有することで、「うちの子が今どの段階にいるか」についての認識が揃う。認識が揃えば、「今は少し様子を見よう」「もう少し話を聞く時間を作ってみよう」という判断もしやすくなる。

ふたりが全く同じ対応をする必要はない。一方が「聞き役」になり、もう一方が「見守り役」になる分業は自然に起きることが多い。問題は役割の違いではなく、それぞれが子どもに対して矛盾したメッセージを送ってしまうことだ。一方が「大丈夫、気にするな」と言い、もう一方が翌日から先生に特別な配慮を頼む——そういった場合、子どもは親の「本当のところ」を読み取ろうとして余計に不安になる。

親自身の不安も関係している

子どもの不安に過剰に反応しやすい親には、子どもの不安が自分の不安を刺激するという背景があることが多い。「この子が苦しんでいるのを見ていられない」「自分が安心させてあげられないのが辛い」という気持ちから、急いで「大丈夫」と言ってしまう。

これは自然な反応だ。子どもが不安がっているのを黙って見ていられる親はそう多くない。ただ、親の「安心したい」という気持ちが、子どもへの「大丈夫」という言葉に乗ってしまうとき、それは子どものためより親自身のための言葉になっている。

ふたりのうち一方がより強く「何とかしなければ」と動いてしまうときは、その人自身の中にある不安を、パートナーと少し話してみる価値がある。子どもの話ではなく、「私は怖いんだよね」「いてもたってもいられない」という気持ちを。

子どもの不安と向き合う前に、ふたりがお互いの不安を少し分かち合えていると、子どもへの関わり方が変わることがある。子どもの不安を「なくしてあげること」が親の役目だという思い込みを手放したとき、ふたりの向き合い方はまとまり始める。

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