小1の壁共働き学童保育働き方

小1の壁は仕事の問題ではなく、夫婦の前提がずれている問題だ

子どもが小学校に入る年、共働き家庭の過半数が働き方の変更を検討する。壁にぶつかる前に揃えておくべき「誰がどう対応するか」の前提とは。

2026-07-24

窓辺に向き合うふたりのシルエット

「小1の壁」という言葉は聞いたことがある。でも自分たちには関係ない、なんとかなる——そう思っていたのに、実際に入学の年が来たとき、ふたりの間で想定外のすれ違いが起きる家庭は少なくない。

壁の中身は人によって違う。学童の終わる時間が早い、夏休みの40日間をどう乗り切るか、子どもが熱を出したとき誰が対応するか。どれも「仕事との両立の問題」に見える。だが、多くの場合その手前に、ふたりで揃えていなかった前提がある。

過半数が「働き方を変えた」という現実

小1の壁は体感の話ではなく、実際に多くの家庭で働き方に変化を生じさせている。

放課後NPOアフタースクールが2023年に実施した調査では、共働き家庭の保護者の50.7%が子どもの小学校入学時に「働き方の変更を検討した」と回答しており、実際に変更した人は37.9%にのぼった。変更した内容として多かったのは時短勤務への切り替え(27.4%)と、正社員から異なる雇用形態への変更(12.4%)だった。

同調査で84.7%が「子育てと仕事の両立は大変」と感じると答えながら、87.8%が「家計のために働く」と答えている。やめたくてやめるのではなく、仕方なく働き方を変えている家庭が多いことが見えてくる。

そして「両立のために必要だと思うもの」を聞いた設問で、最も多く挙げられたのは「職場の理解」でも「放課後の子どもの居場所」でもなく、「配偶者の理解」だった。仕事の問題として語られやすい小1の壁が、実は夫婦間の問題として経験されている。

壁の内側で起きていること

「小1の壁」が具体的に何を指すかは、家庭によって異なる。ただ、共通してよく挙がるのは次のようなことだ。

放課後の時間帯のギャップ。保育所・幼稚園は多くの場合18時や19時まで預かってくれるが、小学校の放課後は14〜15時台に始まる。学童保育を利用しても、終了時間が18時前という施設は珍しくない。フルタイムで働いていれば、毎日誰かが早く帰る必要が生じるか、送迎を誰かに頼む必要がある。

夏休みの長さ。40日間、子どもは毎日家にいるか、どこかに預ける必要がある。学童が夏休み中も対応していない自治体もある。保育園時代に感じなかった「夏休みの重さ」が、初めてのこととして来る。

体調不良時の対応。小学校低学年は感染症をもらいやすく、「熱が出た、迎えに来てほしい」という連絡は年に何度もある。どちらが動くかの判断が、毎回暗黙のうちに行われている。


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本当の壁は準備ではなく前提だ

キッチンで話し合う夫婦

壁にぶつかる家庭と、比較的スムーズに乗り越える家庭の違いは、情報収集の量でも、学童の質でもないことが多い。ふたりの間で「誰がどう動くか」の前提が揃っているかどうかの違いだ。

よくあるパターンは、「なんとかなるだろう」という暗黙の期待が、一方に偏っているケースだ。「子どものことは主に自分が動く」と一方がすでに引き受けているつもりでいる、あるいは「困ったときはどちらかが対応すればいい」と漠然と思っている。お互いの前提が違ったまま入学を迎えると、最初の「誰が迎えに行く?」という場面で食い違いが生まれる。

もうひとつよくあるのは、「入学してから考える」という先送りだ。保育園・幼稚園の段階では困っていないから、あえて話し合う必要を感じない。だが学童の申し込みは入学の半年前から始まる自治体もあり、「考えてから動く」では間に合わない部分が多い。

入学前に揃えておくこと

小学校に入る前に、ふたりで確認しておくと入学後がスムーズになる。完璧な計画を立てる必要はないが、「想定」を共有しておくだけで、いざというときの動き方が変わる。

放課後の定常対応。学童に入れるか、習い事で対応するか、ファミリーサポートや祖父母を使うか——毎日の18時までをどう埋めるかの方針を、ふたりで決めておく。「入ってから考える」ではなく、申し込みの時期から逆算して動く必要がある。

急な対応の分担ルール。子どもが熱を出したとき、「まず連絡する方・呼ばれたら動く方」を決めておく。毎回その場で判断すると、どちらも「相手が動くだろう」と思いやすい。仕事の繁閑、移動時間、その日の予定などを基準にしたルールをざっくり決めておくと、摩擦が減る。

夏休みの過ごし方。学童が夏休み中も対応しているか、学校の「夏期保育」があるか、子どもをどこかに預けるか、親が交互に休むか——これはかなり具体的な調整が必要になる。入学前の3月〜4月に、その年の夏休みをどうするかを大まかに話しておくと、7月末に慌てなくて済む。

「誰かが調整する」を明確にする意味

小1の壁の話をするとき、「結局、どちらかが仕事をセーブすることになる」という話になりやすい。それが現実として起きている家庭も多い。

ただ、「どちらかがセーブする」という結論に至るとしても、それをふたりで選択したのか、暗黙のうちに決まったのかは、大きく違う。暗黙のうちに決まった場合、セーブした側に「選ばされた」という感覚が残りやすく、数年後の不満の種になる。

「うちはこういう状況だから、今はこちらが調整する」という共通認識を持って動くことと、相手の動き待ちのまま気づいたら自分が全部引き受けていた、では、同じ結果でも関係への影響が違う。

入学を控えているなら、具体的な段取りの話より先に「ふたりはどう動きたいか」を話す機会を作ることが、壁を「壁」にしないための入り口になる。

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