子どもの教育費、夫婦で方針が割れやすいのは金額よりも価値観の差だ
1,489万円。親たちが想定する教育資金の平均額は過去最高水準だ。お金の話をするたびにかみ合わないのは、金額ではなく「何に使うか」の優先順位が揃っていないからだ。
2026-07-24

子どもの教育費について話し合おうとするたびに、なぜかかみ合わない。「もっと習い事をさせたい」「そんなにかけなくていい」「塾は必要だと思う」「学校の勉強だけで十分でしょ」——どちらも子どものことを考えているのに、話すたびに違う方向を向いている。
このすれ違いは、教育費の「金額」の認識が違うのではないことが多い。使い道の優先順位、言い換えれば「子どもの何に価値を置くか」が揃っていないことから来ている。
親が想定する教育資金は過去最高水準に
教育にかかるお金の現実は、多くの親が想定しているより大きい。
ソニー生命保険が2025年に実施した「子どもの教育資金に関する調査」(N=2,000)では、子どもが小学生から社会人になるまでに必要な教育資金の平均予想額は1,489万円で、調査開始以来最高額となった。また、子どもが高校生以下の親の8割半が「大学等の学費は高すぎる」と感じており、61.1%が「老後の備えより子どもの教育費にお金を回したい」と答えている。
学校外教育費の平均支出は月16,172円。塾・習い事・通信教材などを合わせると、毎月それだけの出費が続いている家庭がある一方、抑えている家庭もある。「いくらかけるか」の感覚は家庭によって大きく違い、それがそのままふたりの認識のズレになりやすい。
高いと感じるか妥当と感じるかは、教育への見方で変わる。「大学は出ておいた方がいい」と考える人と「本人がやりたいことを応援したい」と考える人では、必要だと思う金額も、使うべき場所も異なる。
「教育費をかける」の意味がすでに違う
夫婦で教育費の話をするとき、同じ言葉を使っていても中身が違うことがある。
「教育にお金をかけたい」という言葉の裏に、「学力を伸ばしたい」「受験に対応できる力をつけたい」「よい進路につなげたい」という意味を込めている人がいる。一方で、同じ「教育にお金をかけたい」が「多様な体験をさせたい」「好きなことを見つけさせたい」「感性や人間力を育てたい」を意味している人もいる。
この前提が揃っていないまま「どの習い事に通わせるか」「塾はいつから必要か」を話そうとすると、具体的な話が全くかみ合わない。「それにお金をかけてどうするの」「なんでそこを削ろうとするの」という摩擦が続く。
原因は習い事の好みや塾への考え方の差ではなく、もっと手前の「教育を通じて何を子どもに得てほしいか」がずれているところにある。
このテーマ、夫婦で話せていますか? 「ふたりごとに」では「子どもの教育費、ふたりの優先順位を確認する」をテーマにした対話カードを提供しています。
使い道の優先順位を揃えるとは

「ふたりで教育費の方針を決める」と聞くと、表計算シートを用意して予算配分を詰めるようなイメージを持ちやすい。だが実際に必要なのは、数字より先のことだ。
学力重視か体験重視か。受験・学力向上に向けた投資を優先するか、スポーツ・芸術・自然体験など多様な経験に使うかは、最初に揃えておくべき方向性だ。どちらが正しいのではなく、ふたりがどちらに傾いているかを確認する。
先取り投資か必要に応じてか。早い段階から習い事・進学準備にお金をかけるか、子どもが「やりたい」と言ったときに対応するかも、使い方の方針として違いが出やすい。「小さい頃から色々やらせた方が可能性が広がる」と思っている人と、「本人が決めるまで待つ」と思っている人では、幼児期・小学校低学年への教育費の向き合い方が大きく変わる。
貯蓄と現在の支出のバランス。大学進学のために今から積み立てるか、今の子どもの経験にお金を使うかも、家庭によって方針が分かれる。どちらも合理的な選択だが、暗黙のうちに「当然こうすべき」と思っていると、相手の行動に違和感を持ちやすい。
「老後より教育費」を合意だと思わない方がいい
「老後より子どもの教育費を優先したい」と答えた親が6割を超えるというデータは、多くの親の率直な感覚を映している。ただ、このことについてふたりで意識的に話しておく必要がある。
どこまで教育費に使うか、老後の備えをどう確保するか——これをあいまいにしたまま進むと、子どもが大学進学の年齢になったとき、あるいは自分たちの老後が近づいたときに、「こんなはずじゃなかった」という状態になりやすい。
教育への投資の上限をざっくりでも決めておくことは、その後の判断の質を上げる。「塾に通わせたい」「私立への進学を本人が望んでいる」という話が出たとき、ふたりが共通の枠組みで考えられるようになる。
具体的な話をする前に確認すること
「子どもの教育費についてちゃんと話したい」と思ったとき、いきなり金額の話から入らない方がうまくいきやすい。
まず「教育を通じて子どもに何を得てほしいか」を、ふたりがそれぞれ言葉にしてみる。学力、体験、自己肯定感、将来の選択肢の広さ——何を大事にしているかが見えると、使い方の話が自然につながる。
次に「今の家計で教育にどれくらいかけられるか」をざっくり把握する。完璧な計算でなくていい。「月にこれくらいが教育費に向けられる」という感覚をふたりが持てると、具体的な話の基準ができる。
その上で「習い事・塾・教材などに今何をかけているか、これからどうしたいか」を話す。このステップを踏まずに、いきなり「◯◯塾に行かせたい」「習い事を増やしたい」という話をすると、方針の話より先に感情的な摩擦が起きやすい。
「教育費の使い方」は子育ての価値観の一番具体的な現れ方のひとつだ。言い方を変えれば、ここをふたりで話せると、他の子育ての方針も揃えやすくなる。