親の老後・介護のことを夫婦で話せていないまま、時間だけが過ぎていく
子育て中は「まだ先の話」で後回しにしやすいが、親の介護問題は突然やってくる。どちらの親をどう支えるかは、夫婦の価値観が最も深く問われるテーマのひとつだ。
2026-07-24

「親の老後のこと、どうするか話したことある?」——子育て中の夫婦がこの話を切り出しにくいのは、「まだ早い」「考えたくない」という感覚と、「でもそろそろ話しておかないと」という不安が混在しているからだ。
親の介護問題は、多くの場合「準備していなかったときに突然やってくる」という性質を持っている。準備する前に状況が動き始めると、感情的な状態で大きな判断を迫られることになる。
介護問題が夫婦に与える影響
介護が始まった後の夫婦関係について、調査や事例からはっきりしていることがある。
介護の主な担い手は、現状では女性(特に嫁・娘)に集中しやすい。厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)では、同居の主な介護者の約54%が女性となっており、特に義親の介護を嫁が担うという役割期待が残っている地域・家庭も多い。
介護が始まった後に夫婦間で意見が対立するのは、多くの場合「どちらの親を、誰が、どのように介護するか」という具体的な問題だ。「施設か在宅か」「仕事をどこまで続けるか」「介護費用は誰が負担するか」——これらを事前に話していないと、状況に迫られた中での判断になる。
子育て中に話しにくい理由
子育て中に親の老後の話がしにくいのには、いくつかの理由がある。
まず「まだ元気だから」という現実がある。親が60代・70代でも元気でいる今、「介護の話をするのは縁起が悪い」「まだ先の話だ」という感覚は自然だ。
次に「考えるのが怖い」という感情もある。親が老いていくこと、やがて失うことを具体的に想像することへの心理的な抵抗は、多くの人が持っている。
また「どちらの親かで話が複雑になる」という事情もある。自分の親についてはある程度考えられても、相手の親についての方針をどう決めるかは、夫婦の関係性・距離感・お互いの家族への感覚が絡んでくる。
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早めに話しておくべき中身

「親の老後の話」を今の段階でしておくことの価値は、決定を急ぐことではなく、方向性のすり合わせをしておくことにある。
それぞれの親の現状。今の健康状態・居住地・経済状況はどうか。持病はあるか。一人暮らしか、どちらかの親が先に逝った後のことを考えているか。これを双方が話しておくだけで、「いつ何が起こりえるか」のイメージが共有される。
介護への考え方。「できるだけ自宅で」という考え方と「専門家のいる施設の方が良い」という考え方は、価値観として大きく違う。どちらが正しいということではないが、ふたりの考え方を把握しておくことが、実際に選択する場面での出発点になる。
誰が担うか。「家族が介護する」という前提では、誰が主に担うかという問題が必ず出る。「自分の親は自分が責任を持つ」という考え方か、「夫婦で一緒に考える」という考え方か。ここが揃っていないと、実際に介護が始まったときに「なぜ自分だけが」という感覚が出やすい。
費用の考え方。介護費用は誰が負担するか。親の貯蓄で賄えるかどうか、子ども側がどこまで負担するかを考えるかを、大まかに話しておくことで、後の驚きを減らせる。
「今すぐ決める」必要はない
「介護の話をしよう」と言い出すと、「そんな先のことを今決めなきゃいけないの?」という感覚になることがある。決める必要はない。ただ、「どういう考え方を持っているか」を互いに知っておくだけで、いざというときに「聞いたことがなかった」から「こう考えていたのか」という状態で話し合えるようになる。
子育て中のタイミングで意識しておきたいのは、「親が元気なうちに会いに行く機会を作ること」だ。元気なうちに会話した記憶・関係性が、介護が始まったときの感情的な文脈に影響する。親との距離感を保っておくことが、のちの判断を感情的に豊かにしてくれる。