子育て中に夫婦のふたり時間が減るのは当然ではなく、仕組みがある問題だ
子育て中の夫婦の6割が年間デートゼロ。「忙しいから仕方ない」で片付けやすいが、ふたりの時間を後回しにし続けると、関係の基盤そのものが変わっていく。
2026-07-24

「ふたりで出かけたい」——と思っていても、なかなか言い出せない。子どもを誰かに預けるのは申し訳ない、そこまでしてデートする意味があるのか、相手も疲れているし、そもそも自分の気持ちを大げさに言いたくない。そうして「また今度」が積み重なっていく。
子育て中にふたりの時間が消えていくのは、忙しさの問題だけではない。「ふたりの時間は後回しにしていい」という感覚が、気づかないうちにふたりの間で共有されていることから来ている。
年間デートゼロが6割という現実
数字で見ると、子育て中の夫婦がふたりの時間を持てていない実態は厳しい。
いこーよファミリーラボが子育て中の夫婦を対象に実施した調査では、約6割(60.5%)が「この1年、夫婦でのお出かけはゼロ」と回答している。日常的な外出ではなく、「夫婦ふたりで出かける」という経験自体が年間を通じて一度もない家庭が多数派だ。
シチズン時計が2025年に実施した「夫婦の時間」に関する調査では、夫婦の会話時間は20年前と比べて約20分減少しており、休日に「会話ゼロ」の夫婦も約7%にのぼる。理想とする会話時間との差は、夫・妻ともに平均20分程度あり、「もっと話したい」と感じながら話せていない状況が見えてくる。
この数字を見て「うちも同じだ」と感じる人は多いはずだ。問題は、それが「子育て中は当然そうなる」で終わってしまうことだ。
「言い出せない」が積み重なる
ふたりの時間が減っていく構造には、言い出しにくさが関係している。
「たまにはふたりで出かけたい」と思っていても、それを言うことへのハードルがある。「子どもを置いていくのは親として……」という罪悪感、「そんなことを言うのはわがままでは」という遠慮、「相手もしんどいのにそんなことを言える雰囲気じゃない」という空気の読みすぎ——これらが重なると、望んでいることが言えないまま時間が経つ。
一方で、望んでいない方(または「仕方がない」と思っている方)には、この話題が上がってこないことへの問題意識がない。出かけられていないことは知っているが、「困っている」という感覚は薄い。
このすれ違いが長く続くと、「求めている側」は「言っても変わらないし、大げさに思われそう」という感覚を蓄積させていく。そして、ふたりで過ごす時間への期待をだんだん持たなくなっていく。
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ふたりの時間が「後回し」になる仕組み

子育て中に夫婦の時間が後回しになるのは、優先順位の問題として機能しているからだ。
子どもの習い事の送迎、食事の準備、宿題の確認、お風呂と寝かしつけ——日々のタスクは次々と発生し、「やらなければいけないこと」が「やれたらいいこと」より常に先に来る。ふたりの時間は「やれたらいいこと」に分類されているため、構造的に後回しになる。
もうひとつの仕組みは、「子どもが中心」という価値観の共有だ。子どもが生まれてから「夫婦」より「親」としての役割が前に出ることは自然な変化だ。ただ、その変化が「夫婦としての関係は今は二の次でいい」という形で定着すると、ふたりの関係そのものの基盤が変わり始める。
子どもが育った後、「ふたりに戻った」とき、関係の土台がどこにあるかが問われる。子育てが終わって改めてふたりになったとき「この人とどう過ごすかわからない」という感覚を多くの夫婦が経験するのは、子育て中に「ふたり」を後回しにし続けた積み重ねと無関係ではない。
頻度より「意図」が変わる
ふたりの時間を取ることが難しい状況は、変わらないかもしれない。子どもを預ける場所がない、金銭的な余裕がない、そもそもふたりとも疲れている——現実的な制約は存在する。
だが「頻度」より大事なのは「意図」だ。
「ふたりの時間は必要なものだ」という認識をふたりで持てているかどうかが、実際に行動できるかに影響する。「大事だと思っている」と「頑張ればできる」の差は小さくない。
できることから始めるとすれば、子どもが寝た後の30分を「話す時間」として意識的に持つことでも、月に一度だけでも誰かに預けてふたりで出かけることでも、その規模より「ふたりの関係に意識を向ける時間を作る」という意思決定の方が意味を持つ。
「どれくらいの頻度で」より先に、「ふたりの時間をどう考えているか」をふたりで話してみることが、最初のステップになる。