子どものネット利用で夫婦の方針が割れるのは、リスクの感じ方が違うからだ
青少年の98%がネットを使う時代に、フィルタリングをしている家庭は半数以下。「管理すべき」「信頼すべき」の対立の奥に、ふたりのリスク認知の差がある。
2026-07-24

「フィルタリングはかけるべきだと思う」「でも制限しすぎると、使い方を自分で学べなくなる」——子どものネット利用についてルールを決めようとすると、最初の一言からかみ合わないことがある。
どちらも子どもを思ってのことだ。ただ、この対立は「厳しい派・緩い派」の問題ではない。ふたりが「ネットにどんなリスクがあるか」について、全く違う感覚を持っているまま話しているから、話がかみ合わない。
ほぼ全員が使っている、でも方針は整っていない
子どものネット利用は、もはや「させるかどうか」の段階ではない。
こども家庭庁が2025年3月に公表した「令和6年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、青少年全体のインターネット利用率は98.2%に達している。小学生で97.2%、中学生で98.1%、高校生で99.4%と、学校種を問わず利用はほぼ全員に広がっている。
一方で、保護者がフィルタリングを設定していると回答した割合は45.8%。過半数の家庭では、何らかの制限なしに子どもがネットを使っていることになる。「使う」ことは決まっているが、「どう使わせるか」の方針は家庭によってばらばらだ。
使い方のルールを設けている家庭は37.2%——つまり「時間や場所を決めている」家庭でも、半分もない。子どものネット利用は「なんとなく始まって、なんとなく続いている」という状態の家庭が多数を占めている現実がある。
「管理すべき」と「信頼すべき」の対立
ネット安全について夫婦で話し合うとき、よく見られる立場の分かれ方がある。
一方は「フィルタリングをかける、使える時間を決める、見ているものを確認する」という管理重視の立場だ。ネットで実際に起きているトラブル——不適切なコンテンツへの接触、なりすまし、課金トラブル、子どもが見知らぬ人とやり取りしてしまうリスク——を意識していると、管理が必要という結論になりやすい。
もう一方は「適切な使い方は教えれば分かる、制限しすぎると本人が自分で判断する力が育たない」という信頼重視の立場だ。ネットは現代社会の基盤であり、うまく使いこなす力をつけることが長い目で見て大事だという発想だ。
どちらにも根拠がある。制限の有効性に関する研究と、自律的な判断力の育成に関する研究のどちらも存在しており、「正解はどちら」と言い切れない状態だ。だからこそ、ふたりの話し合いが噛み合いにくい。
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リスクの感じ方が違う理由

「管理すべき」「信頼すべき」の対立の奥にあるのは、ふたりがネットのリスクをどう実感しているかの差だ。
ネットトラブルのニュースを日常的に見ている、または周囲でトラブルを経験した人を知っている——そういう経験があると、リスクの解像度が高くなる。「うちの子だけは大丈夫」とは思いにくい。
逆に、自分自身がネットをうまく使いこなしてきた、トラブルに遭ったことがない——そういう経験があると、「適切に使えば問題ない」という感覚になりやすい。自分の体験が基準になるのは自然なことだ。
またデジタルリテラシーの差も影響する。SNSのプライバシー設定の仕組みを知っているか、子どもが使うゲームやアプリがどんな構造かを理解しているか——知っている方がリスクを具体的にイメージできる。知らない方は「よくわからないから不安」か「使ったことがないから大丈夫だと思う」のどちらかになりやすい。
リスクの感じ方が全く違うふたりが「管理すべきか」を話し合っても、スタート地点が違うから噛み合わない。
フィルタリングより先に決めること
具体的なルール(フィルタリング、使用時間、使えるアプリ)を決める前に、ふたりが揃えておくべきことがある。
子どものネット利用で何を心配しているか。不適切なコンテンツ、個人情報の流出、課金、オンラインでの人間関係トラブル——何に対してどれくらい危機感を持っているかを、ふたりがそれぞれ出し合う。この時点で見えていたリスクの差が、ルールの方向性の差になっている。
子どもの現在の使い方を把握する。何のアプリを使っているか、誰と連絡を取っているか、どんなゲームをしているか——今の状況を把握しないままルールを作ると、実態とずれた制限になりやすい。子ども本人に聞いてみることも含めて、「現在地」を確認する。
ルールを話し合うより先に、子どもと話す。親同士で決めたルールを後から「こうなったから」と伝えるより、「なぜこういうルールが必要か」を子どもに説明できる状態で作る方が、子どもが納得しやすく、守られやすい。
ネット安全のルールは、技術の変化に合わせて更新が必要になる。「一度決めたら終わり」ではなく、定期的に見直す仕組みを持っておくことが、実態に合い続けるためのポイントだ。